2020 Dec. 23

第11回“光”機到来!Qコロキウム

盛会のうちに幕を閉じました。ご参加ありがとうございました!


発表1:

玉井 康成(京都大・助教)
時間分解分光法で明らかにする励起子および電荷ダイナミクス 
-光電変換と光アップコンバージョン-

光→電気変換を行う太陽電池や光→光変換を行うアップコンバージョン発光素子は、素子内部で進行する励起エネルギー移動や電荷分離といった光物理素過程の積み重ねによってその機能を発現させている。これらの光物理素過程はフェムト秒からミリ秒の高速かつ広範な時間スケールで進行しているため、過渡吸収分光法などの時間分解分光法による研究が有効である。本講演では過渡吸収分光法によって明らかになった有機薄膜太陽電池およびアップコンバージョン発光素子の動作メカニズムについて紹介する。

発表2:

谷 洋介(大阪大・助教)
柔軟な有機分子の室温りん光と配座変化に基づく機械刺激応答機能


りん光は長らく、イリジウムなどの貴金属錯体の専売特許でした。ここ10年ほどで金属を含まない有機りん光材料の研究が一気に発展しましたが、色素を結晶など剛直な環境下におくことは、未だにほぼ必須条件と考えられています。我々は最近、チエニルジケトンという有機分子骨格が様々な環境下で効率よくりん光を示すことを見出し、その原理の究明と応用に取り組んでいます。「柔軟性」と「高効率りん光」を両立するチエニルジケトンならではの興味深い機能が見つかってきており、本発表では、分子のダイナミックな配座変化とそれを利用した機械刺激応答機能を中心に紹介・議論します。

Youtube チャットコメント一覧:

 講演1:

*チャットコメントに対する先生方からの返答をいただけた場合は黄色で追記します。

質問①
Kiyoshi Miyata
干渉を利用する場合白色光の入射角度も影響しそうですが、そこは問題にならないのでしょうか?
→ ご指摘の通り入射角に依存します。太陽電池の性能は垂直入射の条件で評価するため、吸収率測定の際もできるだけ垂直に近いAOI = 5°で測定しています。
OSCを実用する場面を想定すると、必ずしも常に最適角度で設置できるわけではありませんので、光電変換効率の入射角依存性の評価、あるいは入射角依存性を低減する工夫が必要になると思います。


質問②

​Kiyoshi Miyata
Energy offset が小さくなるというのは励起子の束縛エネルギーが小さいということになりそうなので、CT性が向上しているということに直感的にはなるので意外でした。LEからの発光ということは、発光スペクトルも振電バンド乗り方が変わったりするのでしょうか?
→ OSCのCT状態は異種材料間で形成されるものなので、オフセットの大きさは励起子束縛エネルギーとは相関しません。この辺りはTADFとは大きく状況が異なる点でしょうね。
オフセットが十分大きな系のCT発光スペクトルは光化学の教科書に載っているようなMarcusのベル型をしているものが多いですが、オフセットの少ない系の発光はLE-likeということもあり振動構造を持っているように思います。


質問③

Yoichi Kobayashi
​Marcus正常領域として考えると、S1-CTエネルギーギャップが小さいというのは電子移動速度が遅くなっていそうなのですが、そのような挙動は観測されていますでしょうか?
→ 確かにオフセットの少ない系で電子移動速度の低下が観測されています。一方、最近の研究でオフセットがなくても1 ps以内に高速で電荷移動する系も見つかっており、違いが何に起因するのかを現在検討中です。


質問④

Yasuhiro Kobori
​Hybridizationによる電圧ロスが無くなると、今度は輻射過程による電流ロスにならないでしょうか?ここのCT状態の輻射過程が起こる前に電荷解離が優先的に起こるような仕掛けがあると言うことですか?
→ 今のところは輻射速度の増大は電流ロスにはなっていません。無輻射遷移速度定数が108 s-1オーダーなのに対して、輻射の速度定数はLE-CT hybridizationによって大きくなったとはいっても最大でも105 s-1オーダー程度ですので、CT状態のダイナミクスに影響を与えるほどではありません。
逆に言うとまだ改善の余地が大きく残されているということなので、今後研究が進み、さらに輻射が速くなると電流ロスとのトレードオフが問題になってくると思われます。


質問⑤

Kiyoshi Miyata
三元ブレンド膜はどのような形態(一様? 海島?)となっているのでしょうか。
→ アモルファスなホストポリマーP(F-An)のマトリックス中に、増感剤PtOEPはほぼ孤立分散しています(吸収・発光スペクトルの形状から確認)。Annihilatorのbis-Anはホストマトリックス中で小さな凝集ドメインを形成しており、そのおかげで三重項励起子を局所空間に集積できるようになっています。


コメント❶

Yoichi Kobayashi
​やはり電荷移動速度遅くなって、効率下がるんですね。おもしろいです!!ありがとうございます!!

 講演2:

質問①

S S​
3n-πはSpin-orbitCoupling大きくする上で有利だと思いますが、何らかの方法で見積もれますか?


質問②
Yasuhiro Kobori​
S1-T1ともに、n-π *ということでしょうか?そうするとどのようなスピン軌道相互作用が効いて項間交差していると考えていますでしょうか?三重項電子状態と項間交差の機構については、時間分解ESRで分かるかもしれません。

質問③
Shinsuke SEGAWA
Br の位置を変えた誘導体を作って比べると面白そうですが、可能でしょうか?

質問④
Albrecht Ken
​プロトン性の溶媒中で発光測定をしたことはありますでしょうか?励起状態でカルボニルの所にたかって変化が見れるかなと思いました。

質問⑤
Hiromichi MIYAGISHI
​Brがない分子のknrとkrはBrがある分子と比べてどうなりますか?

質問⑥
Shinsuke SEGAWA
TIPSを入れている理由を教えていただきたいです。

コメント❶
Yasunori Matsui
S・・O・・Brの配置が面白い分子だと思いました.強固すぎることもないので結晶系での相互作用でも変わりやすいのかと思いました

質問⑦
Albrecht Ken
​エステル架橋スチルベンは電気化学的な測定はしたことがありますか(CVなど)?

質問⑧
​Hajime Nakanotani
H体でもISC効率は高いのでしょうか?

コメント❷
S S
​<S1|SO|T1><S1|μ|S0>や<S2|SO|T1><S2|μ|S0>みたいなものが燐光強度に効くと思います